掲載日:2012-03-24
3/11福井典子さんを講師に招き、「社会保障と私たちの暮らし~障害者総合福祉法は、どうなるのか?」というテーマで学習会を開きました。
私は個人的に福井さんのファンで、「テーマは難しいけれど、きっとおもしろいお話になるだろう」と期待していました。
福井典子さんは重度障害児の母として、まず「養護学校の義務化」の運動に取り組まれました。
福井さんは子どもをおぶっての陳情や要求運動に走り回ったとのことです。
この運動には私の母も取り組んでいましたので、当時の福井さんは存じ上げませんが、母の姿を重ね合わせると、福井さんのご苦労の様子が手に取るようにわかりました。
「障害児の就学猶予、就学免除」を知らない方も多くなってきましたが、
1979年に母親たちを中心にした運動により、重度・重複の障害児も養護学校に入学できるようになったのです。
福井さんは障害のあるご長女を養護学校に入れてからは「兄妹がいた方がいい」と考え、
第二子を出産されますが、双子であったためか、お二人とも軽い障害を持って生まれました。
三人の娘の母となっても精力的に様々な活動に取り組まれる福井さんに対し、
障害当事者から「福井さんは当事者ではないから・・・」と、一線を引かれることもあったそうです。
そんな福井さんが「てんかん」を発病され、「障害者」となってしまいました。
このような状況になったら、たいていの人は落ち込み絶望すると思いますが、
福井さんは、「私も障害当事者として発言ができる!」といって病気を受け入れ、現在は「日本てんかん協会」の理事もされています。
またご主人が認知症になり、数年間在宅で看護と介護をなさっていました。
実は先月末にご主人が亡くなったばかりでしたが、福井さんはそのお悲しみを吹き飛ばすかのように、
ご主人の介護から知った医療現場・介護職の現状も話してくださりました。
どんな状態になってもご自分のもっている力を「運動」にシフトし、突き進む福井さんの生き様に、
私は圧倒されるばかりでした。
東日本大震災と原発事故、
そして復興にはじまり、
貧困と格差、
就職難、
路上生活者、
自殺、
無縁社会、
孤独死、
子どもシステム、
消費税大増税・・・日本が抱える難問はすべて一本の線で結ばれていることを、当事者(生活者)の立場で、わかりやすく説明してくださりました。
「障害者自立支援法」に関しては、「障害者」ゆえに受けざるを得ないサービス、「障害」があっても人間として当たり前に生きるため必要なモノすべてにお金を支払えというのですから、そもそもこの法律が憲法に違反している。
ここをしっかり抑えておく必要があります。
2005年に自立支援法が成立しますが、
2006年に国連の障害者権利条約採択後、
2009年には全国で71人の原告が「障害者自立支援法違憲訴訟」をお越しています。
(これは「自立支援法」が障害者の権利を脅かすモノである証です)
その後2010年には弁護団と国とが「基本合意書」を結び、国は2013年8月に自立支援法を廃止し、新法実施へと動き始めました。障害当事者も含めた「障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会(55名)」を設置。
その中に福井さんも加わっていらっしゃいます。
2011年8月、総合福祉部会は「骨格提言」をまとめました。
その後すべての障害者団体が一つになり、2011年10月、「日本障害者フォーラム・JDF」が主催となり、日比谷公園で1万人人の集会が行われ、大成功をおさめました。
日本の福祉水準は先進国の中で最低と言われていますが、今まで運動してきた私たちは「今度こそ! 当事者の力で新法が作れる」と期待しました。
しかし2012年2月に発表された「厚労省案」には、「骨格提言」の60項目中、3項目しか取り入れられていませんでした。
私たち当事者の運動は何だったのでしょう?
福井さんたち推進会議は何のために設置されたのでしょう?
またしても「国」は私たちを裏切ろうとしています。
「厚労省案」の中には何回も「可能な限り」という文言が出てきます。
このようなあいまいな表現を使って「新法」を成立させようとしている国に、私は怒りよりも失望を感じています。
私だけでなく、落胆している仲間たちへ、福井さんはエールをくださいました。(要約)
●決してあきらめない運動の展開を! 運動は裏切らない。
●憲法を暮らしにいかす。
被災地の復興を例に取ると、国は被災者たちに頑張らせ、ボランティアや義援金を募っていますが、 国としての 明確な「復興策」は立てていません。
「自助努力」や「共助・支えあい」はもちろん大事だけれど、日本の場合「公助・国の施策」が一番後になっています。国は国民の命を守る義務があるのに、その責任は果たしていません。障害者施策も同じこと。
公的責任の強化が必要です。「権利」として社会保障を考えましょう。
●財源問題の解明。予算はある! 大事なのはお金の集め方と使い方。
消費税が3%~5%になって福祉の予算が増えたか振り返ってみてください。もし消費税が10%になっても、変化はないでしょう。
●利用者と介護労働者が連携し、労働者の処遇改善とサービスの向上をしていかなければなりません。
●地域と自治体に密着して運動を展開させましょう。政策的提案を具体的にしていきましょう。
●子育てに追われる母親が家にいて世論を動かすこともできます。新聞やテレビを見て、よい報道、間違った報道に気がついたら、電話やファックスを送るだけでも、世論を刺激することにつながります。直接行政に投書するだけでも「改革のきっかけ」になります。
●ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。たたかいなくして豊かな社会保障制度はありません。
今回の学習会には会員ではなく若いお母さんたちの参加が目立ちました。
前回の学習会同様「保護者会の連絡メール」で呼びかけてもらったのです。
福井さんのお話の後、フロアー発言も活発で、ほぼ全員がアンケートに感想を書いてくれました。
付き添いのヘルパーまでもが「勉強になりました」と言ってくれました。
一般会員の参加がなく誠に残念でしたが、今後につながる会となり、主催者としてうれしく思っています。
私も一参加者として、福井さんからたくさん元気をいただきました。ありがとうございました!