目黒区障害児・者の生活を向上させる会
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放射能とは~安全な食生活のために~

掲載日:2013-12-28


 9月8日、学習会として、野口邦和さん(日本大学準教授、福島大学客員教授、福島県本宮市放射線健康リスク管理アドバイザー等を歴任)から、上記演題の講演をして頂いた。放射線被害は、内部被ばくと外部被ばくに大別されるが、結論から言うと、内部被ばくに関してはそれほど心配する必要はない、ということであった。内部被ばくとは、食品等を通じて放射能の影響を受けること意味するが、現在、注意しなければならない汚染濃度の高い食品とは、①山菜、天然のキノコ類、②鳥獣類の肉、③川魚だけである。これらの食品はどれも、現代人の食生活とは縁遠くなっているし、放射線量を検査した上で市場に流通させているため、それほど神経質になることはない。また、福島県の魚の場合、海の魚も汚染濃度が高かったが、福島県の水産物は濃度のいかんにかかわらずすべて出荷を止められているので、市場には全く流れていない。内部被ばくに関しては、次の見方が重要である。

① 基準値はどうなっているか? ② 検査体制はどうなっているか?

①に関して、現在厚労省の基準は、年間線量の上限は1ミリシーベルトとなっている。野口さんは、政府系の学者ではないが、この基準値は妥当なものであると考えている。その際、併せて知ってほしいのは、すでに宇宙線や建築材料に含まれるウランやトリウム等によって、年間2.4ミリシーベルト自然放射線被ばくを受けているということである。また、多くの人が持っている心配として、微量の放射線でも長年蓄積されれば放射線障害がもたらされるのではないか、というものがあるが、この「塵も積もれば山となる」理論は誤りである。あらゆる生物は排泄を行うが、この行為によっていったん体内に取り込んだ放射線物質も体外に排出されるからだ。この吸収と排泄は一定期間(セシウムの場合、約1年)を経て一定の値となり、これを平衡状態と言う。この平衡状態は吸収の際低濃度であれば低い値に落ち着くことになるため、放射線量の低い食品を食べるようにすることはやはり重要である。そのためには、上述の①山菜、天然のキノコ類、②鳥獣類の肉、③川魚、を避け、調理する際に食材を水で十分洗うように心がければよい。一般的な汚れの場合と同様、放射線物質もお湯で洗った方が除去されやすく、例えばおひたしにすると良いが、現在のところ、そこまで神経質になる必要はない。

②に関しては、現在JAでは、以前なら研究機関にもなかったような、精度の高い検査機器を導入して、精力的な検査が行われているので、検査体制についても十分ではないかと思われる。外部被ばくの方がより深刻な影響が出るが、福島県の外部線量もかなり減ってきている。外部線量を減らすには、基本的に除染しかない。除染については、中間貯蔵施設等の問題も残っているが、それを何とか解決して、今後も継続して進めていくしかない。野口さんは、現在の放射能汚染におけるマスコミの過剰報道の問題点を指摘し、それが風評被害となり、被災地の生産者をかえって苦しめることになっていると述べている。野口さんの講演会の数日後、TVの報道番組で野口さんが出ていたので見てみると、発言を切り取られ、野口さんの主張と正反対のことをコメントしているかのように編集されていた。マスコミの一色報道をなんとかしなければならないという思いを改めて強くした次第である。  

(文責:小林 英樹)