目黒区障害児・者の生活を向上させる会
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「障がい者65歳問題」を考えよう

掲載日:2015-03-21



小林英樹

10/4(土)あいアイ館において行なわれた学習会の報告。

 

 

障害者の生活と権利を守る千葉連絡協議会

 天海(あまがい)正克(まさかつ)

 

 私は50歳すぎまで自分の足で歩き、何の介護も受けていませんでした。その頃は飲んで帰ることが多く、自宅では週1回程度の入浴ですませていました。

2000年頃から、首や足のしびれが多くなり、だんだん手や足の力が弱くなり転びやすくなって、立ちあがってもすぐ転ぶようになりました。

2001年の秋に自宅の2階から階段を転げ落ちたのをきっかけに、実家に転居し、実家では両親と弟がトイレや食事などを介護してくれ、風呂にも入れてくれました。

2002年2月に、横浜の病院に検査入院した時、医者からこのまま尿意も便意もなくなり死ぬのを待つか、手術を受けるかの選択を迫られ、そのまま手術を受けることになりました。首を固定するため頭蓋骨と肩を固定するギプスをはめられ、3月と4月に首の前後から手術して頸椎に金属をはめ神経を通りやすくし、ギプスがとれた5月からリハビリを受けながらやっと週1回のシャワー浴をすることができました。

手術の結果、力もつき声も出せるようになりましたが、自分で歩けなくなり電動車イスでの生活となり、手足のしびれが残ってしまいました。

住宅を改造して2002年11月頃から、措置制度により週2回2時間ずつ千葉市社協のヘルパーを派遣してもらい、衣服の着脱・入浴介助・昼食の調理・掃除・洗濯などで時間におわれ、食事は週2回の昼食以外は外食、電動車いすの生活で運動不足により体重が13キロ増えてしまいました。

2004年から、支援費制度により月・水・金2時間ずつと火・木・土1時間ずつの介護になったので、これにより週3回の入浴と6回の調理を受け、衣服の着替えや外出の身支度もしてもらえるようになりました。

夕食についてはカロリーが低い食事の方が良いというヘルパーの助言で、なじみの飲食店に特注で山菜ぞうすいをつくってもらい毎日食べています。

2005年頃から、介護の時間を増やし、月・水・金2時間半と火・木・土2時間にすることにより週6回の入浴と、野菜を取り入れて昼食と朝食を1日おき交互に調理してもらい、入浴は体を洗ってもらう前と後に10分ずつ湯にひたりゆったりと体をあたためます。

2006年4月から、障害者自立支援法により居宅介護の利用料が1割の応益負担になり、障害程度区分4で月に身体介護40時間と家事援助25時間の計65時間の支給決定され、毎月2万円弱の利用料を払わなくてはならなくなりましたが、全国の障害者団体の団結と運動で、2010年4月から低所得者の利用料が無料になりました。

こうして勝ち取ってまた成果を、年齢により奪うことは許されません。

利用回数の削減や時間の短縮などは断じて受け入れられません。

高齢者に対しての「介護」と、障がい者支援は違います。

「障がい者支援」は、障がい者の生きる権利保障です。

 

65歳問題]

 障害者総合支援法の成立により、障がい者が65歳になると、障害者総合支援法から介護保険法が優先的に適用されることになった。これによって、サービスが低下するのではないかと懸念されているが、自治体によっても対応がまちまちなこともあり、具体的にどのようなサービスが抑制されるかについては不明確であり不透明である。この問題は、障がい者にとって深刻であるにも関わらず、マスコミではあまり取り上げられていない。

 

[討論]

Īさん(目黒区議)

介護保険優先問題と言うのは、区側から提案され、議論される機会は全くありませんでした。この問題が生活福祉委員会の中で議題になったのは、向上させる会が陳情書を提出して、その時、初めて私が介護保険優先問題を取り上げて、論議になりました。議員の中でも、知っている人は少ないと思います。

文献を調べると、これは本当に深刻な問題だと改めて思いました。65歳になると、サービスが削減されていると言われているわけですが、区側にこうした質問をぶつけると、介護保険優先でもその後障害者福祉がついてくるので、目黒区はちゃんと保障してるんだっていうんですね。しかし、それはケースバイケースなので、65歳まで保障されていたことが、その後もきちんとやられているのかっていうのは、なかなかわからないんです。

私が質疑する時一番悩むのは、周囲で具体的にそうした事例がないので、具体的事例にそって質問することができないことなんです。

この陳情は継続審議になっているんで、これからも続いて行きます。具体的なことを教えていただくために、この学習会に伺いました。

 

介護保険第2号被保険者(4064歳で、特定疾患にかかっている人)についての言及があり、それについてもっと詳しく教えてほしいという質問がありました。

以下、会場からの回答です。

 

Aさん・介護保険第2号被保険者であれば、65歳以前でも老人ホームに入れることに一応なってます。しかし、特別養護老人ホームなどは、実際にはそういう人の入所を喜ばない傾向があります。例えば、第2号被保険者の場合、コミュニケーションとかいろいろ難しい問題があって、そういうことが懸念されていると聞いています。

どこに行っても、どうしても「間」(はざま)にある人と言うのが出てしまいます。

しかし、障害だとか、年齢とかじゃなく、もっと一人の人間として何が必要なのかという視点を持たなければいけないと思うけど、まだ現実はそうなってはいません。特に自治体が財政難になると、こういう形式な理由で断ると言うことが起こりがちです。そのようにさせないためにも、講師の先生が言うように、運動が大切なのだということを改めて認識しました。

 

Bさん・介護保険第2号被保険者の場合、例えば車いすについては、介護保険が優先されます。しかし、障害の関係で、どうしてもオーダーメイドが必要な場合には、障害者総合支援法で出す場合もあります。

また、短期入所については、介護保険を優先している自治体が多いように思います。そうすると、マッチしない場合も出てくるので、目黒区の場合、介護保険優先にこだわらないようにしています。東京都と利用提携している入所施設については、第2号被保険者が入所すると、5点減点になります。ただ、これは自治体の判断によって、理由を書けば、減点にしないようにすることもできます。

 

――まだまた話は尽きなく、後日「感想」を書いて下さった方がいるので、ご紹介します。

 

【感想】

昨年あたりから、「65歳問題」という言葉をチラチラ耳にし、漠然と「障害のある人のための現行の介助保障制度は不十分ながら、高齢の人のための制度(介護保険制度)よりはマシである。65歳になったらそれまでよりヒドいサービスを受けざるをえなくなる」ことが問題なのだと理解していました。

しかしお話を聞いて、それ以前に、介護保険制度はどうお粗末なのか、障害のある人の介助保障制度とはどの点で性質が違うのか自分がまったく理解していないことに気づきました。いま必要なのは障害のあるひとの65歳以降について学び声をあげるのではなく、すべての65歳以上の人とその周囲の人について(家族介護の問題もふくめ)知り学び、ともに声をあげることですね。

制度に限らず、差別の問題もそうですが、無意識に押し付けられている分類・種別のワクを取り払って、想像力をフル回転させて同じ人間として同質のものをともに語り求めていく姿勢が、これからますます重要ですよね。

とても刺激的でした。ありがとうございました。(五本木在住・シバヤス)