平成25年6月30日、第40回定期総会の公開学習会として、磯部光孝さんから、「被災地に学ぶ」という演題で、講演をして頂いた。 磯部さんは、きょうされん東京支部副支部長、東久留米の社会福祉法人・イリアンソス理事長で、JDF(日本障害者フォーラム)の要請で、宮城県全域に4回、福島県の南相馬で2回支援活動を行い、岩手県陸前高田市で実態調査を行った。
福島県には、2011年4月6日に支援センターふくしまが開設された。まだ行政の動きが乏しい、早い段階だったので、現地の人々から喜ばれた。
また、JDFとして支援に行ったため、支援の対象者は障害をもつ人々に限らせてもらった。その際、一番の壁になっていたのは、個人情報保護法で、南相馬市側は、障害者手帳所持者の氏名、住所等の情報を開示してくれなかった。
一時、市長は開示を認めたのに、職員から拒否されてしまったこともあった。個人情報を開示できない理由として、市側は、災害に乗じた詐欺が起こる可能性がある、障害者であることを知られたくない人がいる、訴訟を起こされる可能性がある、などを挙げていた。
朝日新聞の連載「プロメティウスの罠」で、当時の南相馬市の健康福祉部長の西浦武義氏が、「障害者を救うには個人情報の開示が絶対に必要だ」と主張し、それが反響を呼んだ。そして、西浦氏の努力もあり、従来は個人情報の開示には審議会の判断が必要だったところを、災害時には、担当部署の判断により開示できるよう、条例が改正された。
この改正をもとに、JDFは市長に要望書を提出し、障害者手帳のデータを下に安否確認することの同意を得た。南相馬市は、全国で唯一、民間団体に個人情報が提供され、障害者手帳所持者1139名への調査が実施された。 また、南相馬市で、市から重大発表があるということで、市民に近くの小学校に集合してもらい、次の三つのうち、どれかを選択してほしいという提案があった。
① 45台のバスで、新潟方面に避難する。(その時点で、具体的な行き先は未定)
② タンクローリーで1家族10リットルのガソリンを配給するので、自分の車で避難する。
③ ガス、水道は使用可能にし、市役所の機能も残しておくので、元気な人にはそのまま残ってもらう。ただし、原発が万一爆発した時は自力で逃げてもらう。 しかし、訪問調査を進めていくと、③の残っている人の中に、元気な人だけでなく、障害をもつ人やお年寄りがたくさん残っていることがわかった。 後半は、ドキュメンタリー映画(DVD)の上映会 「生命(いのち)のことづけ-死亡率2倍 障害のある人たちの3.11」(37分)
監督:早瀬憲太郎(「ゆずり葉」監督)
制作:JDF、日本財団
価格:1万円(上映権付)
(文責:小林英樹)